ト部蛸焼のブログ

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計数数理ってなんだ? ト部蛸焼 ver.

こんにちは,ト部蛸焼と申します。

今回は自己紹介編の第2回として,いま通っている「計数工学科」についてご紹介いたします。進学選択や編入試験を控えた「未来の計数民*1」のお役に立てれば幸いです。

東京大学工学部に属する計数工学科は,「数理情報工学コース」(以下「数理」または「計数数理」)と「システム情報工学コース」(以下「システム」または「計数システム」)の2つのコースからなります。私の都合上,特に計数数理での生活に絞ってお話いたします。

 

計数数理とは?

そもそも,計数数理がどんなところか……大雑把に言えば「数学とプログラミングを駆使して,科学的なあらゆる問題を解決していく」ところだと思います*2

数学やプログラミングを駆使するためにはまずは知識を蓄える必要があります。そのため,学部生の間は以下のような工学的な数学をみっちり学びます。

どれもその後の研究や学問に役立つ数学で,非常に重要なものです。一方,プログラミングに関してはC言語のプログラミング演習(必修)があります。とはいっても,そこまで継続して演習講義を行うわけではないので,多くの人がその後もC言語を独学して身につけるか,「時代はPython」だとしてPythonに鞍替えするか,あるいは全くプログラミングに触れないかのいずれかです。

以下では,より詳しく計数数理についてみていきます。ちなみに,「計数数理」や「計数システム」などの呼称は,計数工学科に関わる人たちの間での共通略称となっています。

 

計数数理の人々

計数数理職人の朝は遅い……

計数数理はなんといってもホワイトです。つまり,なんといっても拘束時間が短い。3年の春夏期*3こそはたくさんの1限に苦しめられる人が大勢ですが,それでも計数システムや物理工学科(物工)よりも空きコマが多いです。後で述べるように,計数数理には必修講義のほかに実質的な必修講義も存在していますが,両方を合わせても講義や演習は週に9つしかありません。さらにどれも課題は多くなく,自分の時間を十分にとることができます。私も3年の春夏期は,月曜日と火曜日のなんと2日間午前休で,自分の勉強や気晴らしにたくさんの時間を割いていました。また,4年の春夏期になれば週休4日果ては週休5日*4なんてことも可能で,非常に拘束時間の観点からホワイトといえます。

だからといって,計数数理の人が遊んでばかりということではありません。というのも確かに拘束時間こそは少ないですが,扱っている数学を理解するのには時間がかかるため,主に復習や自学の時間に多くの時間を割かれることになるからです。また,それだけではなく,計数数理には何か資格試験に挑戦する人,有名なコンテストに出るためプログラミングに精進する人,学生控室*5のホワイトボードで数学の議論をする人……と,自分のスキルを磨くべく各々が何かに取り組んでいます。個人的に,これは計数数理の一員として誇れる数多くのことのうちの一つでもあります。ちなみに私は控室で一人ジェンガに一生懸命になる人です。

計数数理の人たちについて忘れてはならないのが,「数多の数強がいること」かもしれません。先ほども学生控室で数学の議論をする人が登場しましたが,このような光景は日常的に見られるもので,学生控室のホワイトボードはいつもさまざまな数式で埋め尽くされています。これらは,数強どうしの会話の痕跡,数強がレポートのヒントを教授した痕跡,と,要は「数強の活動の痕跡」なわけですが,このような数強が身近にいるというのが計数の良いところでもあります。彼ら・彼女らからは大いに学ぶものがありますし,何より頼りになります。私もレポートの問題が解けないときには気軽に質問しています。そういった環境があることも,計数数理,ひいては計数工学科の大きな利点といえるでしょう。

ひとまず,これで宣伝の役目を果たせたかは微妙なところですが,これで計数数理の宣伝は終わりにします。不足があればまたどこかで……。

 

計数数理での勉強 ~〇〇数理工学~

さて,ここからは学部3年で受ける計数数理の「実質的な必修」について詳述します。

先ほども登場した「実質的な必修」とは具体的には「〇〇数理工学」と名のつく5つの科目を指します。〇〇には代数・解析・確率・算法(アルゴリズム)・幾何が入り,前者3つを3年の春夏期に,後者2つを秋冬期*6に学びます。これらは教務方から受講を勧められていることもあり,「実質的な必修」という立ち位置になっています。また,どの講義にも演習の時間(必修)が別に設けられています。この演習の内容が非常に充実しており,小テストがあれば採点してフィードバックを受けられ,非常に勉強になる・ためになる時間でした。試験の対策もほとんど演習の復習に帰していたことからも,その有意義度が推し測れることと思います。

以下で,〇〇数理工学のときにどんな勉強をしていたかを具体的に書き記していきます*7

代数

5数理工学の中でも,私が一番面白いと思ったのがこの代数でした。代数の講義ではEuclid整域や単項イデアル整域の話まで扱ったと記憶しています。代数は「素元 v.s. 既約元」,「素イデアル v.s. 極大イデアル」といったようにいろいろな概念が微妙な違いで現れるものだと思うので,その違いを覚えるために各種概念間の関係を理解するのに必死になりました。これは4年になった今の話ですが,未だにこの辺りの違いが完璧になっておらず,最近も雪江先生の教科書を読んで復習もしました。早く違いが分かる大人になりたい。また,少なくとも私の年の講義では加群や体論にはあまり立ち入らなかったので,その辺りも含めてこの本で勉強を進めています。また,工学部の代数の講義ということで,束についても学ぶというのは大きいポイントかもしれません。大雑把に言えば束とは集合の包含関係のような構造をもっているのですが,今回はこれについては割愛します。

解析

解析の講義は板書や講義資料を何度も読んで勉強をしました。この講義の演習の時間はLebesgue積分ではなく偏微分方程式の内容を扱うからか,その代わりに講義資料に演習問題がたくさん掲載されていました。試験前にはそれを何度も復習して解けるようにしていきました。

確率

確率の講義は演習のプリントを何度もやっていました。私はあまり確率が得意でも好きでもなかったので,確率の扱い方の理解に非常に時間がかかりました。そのため,豊富な問題量の演習プリントに何度も助けられました。院試を控えたいま,また不得意なこいつらに立ち向かう必要が出てきたので,もう一度彼らを引っ張り出してこようと思っております。周囲の方を見ていると,舟木先生の確率論の本や伏見先生の確率と確率過程に関する本を教科書にしている人もいました。

算法

アルゴリズムは使ってみないと覚えられない」と思っているので,初めのうちは講義で紹介されるさまざまなソートアルゴリズムの実装をしていました。なかなかうまくいかずに途中でやめてしまいましたが,目の前に書かれているソートアルゴリズムのアイデアのどこがポイントなのかを理解するのにはもってこいだと思っています。実装が得意!な方は是非。また,実装が得意でないにしても,アイデアを理解することくらいはすべきだと思います。実際,私はアイデア理解だけでも演習問題などでアルゴリズムを考えるときのいい材料になったので,おすすめです。

幾何

幾何は演習が非常に助けになりました。というのも5数理工学の中で最も抽象的な数学を扱っており,手を動かさないと理解できなかったと思うからです。ホモトピーホモロジーの議論は深く立ち入ると面白いのですが,不用意に立ち入ると何もわからないまま終わってしまいます。その点で,演習のプリントが役に立ちました。

 

……と,よく見たらほとんど演習プリントの話に終始していますが,これは「演習があるから教科書は買わなくていいや」と思っていたからでしょう。あくまで私は興味のある分野以外の教科書を買っても仕方ないと思っていたので,その点で講義資料や演習資料が非常によく整備されていて非常に良かったです。

  

計数工学科と私

最後に,せっかくのブログですから,計数工学科と私の関係を書き記します。

私が計数工学科の存在を知ったのは,恥ずかしくも進学選択の4ヶ月前ほど,学部2年の4月くらいでした。どの分野に進もうか決めかねていた私は「点数を理由に進学選択で不自由したくない」と,入学してから勉強ばかりしていたため,計数数理に向けてどんな勉強をしたかと問われると,返す術もありません。でも,「しておけばよかったことは」と聞かれれば,真っ先に思いつくのは計数工学科が前期教養向けに行っている講義を取っておきたかった,ということです。学科に入ってから講義内容で「しておけばよかった」と思うことはありませんが,もっと早くからモチベーションを知っていれば勉強の仕方が変わっていたかもしれないと思います。

計数数理に入ってから,数式に挨拶し,数式と飯を喰らい,数式と通学/帰宅するような毎日を過ごしています*8が,なかなかに楽しい毎日です。学科の人もとても面白いばかりで,機知に富んだギャグを披露する方,常に興味深い学問的な話題を提供してくれる方,美女図鑑で女性の好みを聞き出す方……と,本当に面白いところです。計数工学科を語る上で忘れてはならないのが,Twitterの普及率で,これは私の学年が異常という話も伺いますが,Twitterでそこそこ名の知れた方が数多く在籍していることも事実です。また,教授・准教授の間でもTwitterを利用している方がいらっしゃり,稀にTwitterで学生と教授が議論をしている光景も見られるほどです。「大学入学以来,Twitterばっかりやっている……」という方にも計数工学科はおすすめかもしれませんね*9

 

*1:主に計数工学科の学生を「計数民」と呼びます。一部からは「めいぷっ子」とも呼ばれているようです。

*2:より正確かつ詳しいことは学科のHPを参照してください。→ https://www.keisu.t.u-tokyo.ac.jp/mist/

*3:3Sセメスターのことです。

*4:言うなれば完全週休5日制。

*5:計数工学科には休み時間などに学生が休憩できるスペースがあり,(学生)控室と呼ばれています。

*6:3Aセメスターを指します。

*7:単位はどれもとったのでご安心を……

*8:8割方これは嘘です。

*9:冗談です。進学選択は用法・用量を守って正しく進学してください。