ト部蛸焼のブログ

日頃知ったことをアウトプットするためのブログ

...鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる

今回は趣向を変えて漢字の読み問題を10問出題します.あなたはいくつ読めますか.

問題

枠内に書かれた漢字はなんと読むでしょう.

第1問
郭公


答え
「かっこう」または「ほととぎす

解説   
ほととぎすはカッコウ科の鳥.ホトトギス科とされることもあるが同じものを指すとのこと[1].

古くから故事に登場したり和歌に詠まれたりしたことで異名や漢字表記の種類が多い.

現在でいう「かっこう」と「ほととぎす」は指す鳥が異なるのですが,見た目が似ているため昔は混同されていた可能性が高いみたいです.「郭公」という漢字はほととぎすを指すのにも使われていたようです[1].

第2問
時鳥


答え
ほととぎす

解説
ほととぎすはカッコウ科の鳥.ホトトギス科とされることもあるが同じものを指すとのこと[1].古くから故事に登場したり和歌に詠まれたりしたことで異名や漢字表記の種類が多い.

この表記は比較的人口に膾炙している気がします.

第3問
不如帰


答え
「ふじょき」または「ほととぎす

解説
ほととぎすはカッコウ科の……

この表記は古代の蜀のとあるほととぎすにゆかりのある王が,自国が秦に滅ぼされたことを嘆いて「不如帰去」と言ったと伝えられることに基づいています[1]*1

第4問
杜鵑


答え
「とけん」または「ほととぎす

解説
この漢字表記は中国での名前に由来したものです.

第5問
子規


答え
「しき」または「ほととぎす

解説
この表記は中国で古くから用いられていた様子[4]*2

第6問
蜀魂


答え
「しょっこん」または「ほととぎす

解説
この表記は古代の蜀のとあるほととぎすにゆかりのある王に基づいています[1][2][3].

第7問
杜宇


答え
「とう」または「ほととぎす

解説
この表記は古代の蜀の杜宇という王が自分の王位を禅譲したのちに山に籠もりほととぎすとなったことに由来しています[1][2][3].この王はのちに蜀の国が秦に滅ぼされるのを見て「不如帰去」と鳴いたとも言われ,第3問で出題した「不如帰」の表記の由来にも,第6問で出題した「蜀魂」の表記の由来にもなっています.

第8問
霍公鳥


答え
ほととぎす

解説
この表記は「かっこう」から当てられたもののようですが,その歴史は古く万葉集にも記載が見られるようです[5].

第9問
沓手鳥


答え
「くつてどり」または「ほととぎす

解説
ほととぎすです.

第10問
油点草


答え
ほととぎす

解説
ほととぎすはユリ科の植物.ほととぎすの花びらは鳥のほととぎすの胸のあたりの模様に似ているためそこからこの名前が付いたのかもしれません.なお,植物のほととぎすには他にも「杜鵑草」という表記もあります.ほととぎすには鳥を表す場合と植物を表す場合があるので,第10問はその違いに気付けるかがポイントでした.



まとめ

……はい! 茶番にお付き合いいただきありがとうございます.

今回は「ほととぎす」と読む漢字を集めてきました.「ほととぎすを表す漢字表記は多いんだなぁ」ということが伝わればそれで終わりです.

ところで,「ほととぎす」といえば小倉百人一首には後徳大寺左大臣が詠んだ

「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる」

という首があります.この歌は7首ある一字決まり*3の一つですからご存知の方も多いでしょう.今回のブログタイトルはこの歌にちなんでつけました.

昔は和歌や漢詩などに頻繁に詠み込まれていたほととぎす.渡り鳥であるほととぎすが日本にやってくるのは春から夏にかけて.次に訪れるその季節にほととぎすの鳴き声に耳を傾けてみてはいかがですか.


参考文献

1. ja.wikipedia.org
2. zh.wikisource.org
3. zh.wikisource.org
4. okwave.jp
5. k-amc.kokugakuin.ac.jp

*1:本当はちゃんとした文献にあたりたかったのですが,ネットで探しても見つからなかったためWikipediaの記事を典拠にしてしまいました.

*2:この引用元によれば,『禽経』という書物に詳しいことが書かれているようですが,その文献にアクセスできませんでした.無念.

*3:いわゆる「むすめふさほせ」の7首で,「村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮」,「住の江の 岸に寄る浪 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ」,「廻り逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」,「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ」,「寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづくも同じ 秋の夕暮」,「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる」,「瀬を早み 岩にせかるる 瀧川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」のことを指す.