ト部蛸焼のブログ

日頃知ったことをアウトプットするためのブログ

数学記法リスト

今回は普段ブログで私が使っている数学の記法についてまとめます.
参考のために一部についてはLaTeXコマンドを掲載しています*1

数と集合

この章では,特に断りがない場合は A Bを集合, n自然数 xを実数, z複素数とします.

数に関する記号

記号 説明
 \operatorname{Re}(z)  zの実部
 \operatorname{Im}(z)  zの虚部

集合演算

記号 説明 LaTeXコマンド
 A \cap B 集合 Aと集合 Bの共通部分 \cap
 A \cup B 集合 Aと集合 Bの和集合 \cup
 A \amalg B 集合 Aと集合 Bの直和 \amalg
 A \setminus B 集合 Aと集合 Bの差集合 \setminus
 A \times B 集合 Aと集合 Bの直積 \times
 A \subseteq B  A Bの部分集合 (等しい場合を含む) *2 \subseteq
 A \supseteq B  B Aの部分集合 (等しい場合を含む) \supseteq
 A \subsetneq B  A Bの真部分集合 (等しい場合を含まない) \subsetneq
 A \supsetneq B  B Aの真部分集合 (等しい場合を含まない) \supsetneq

具体的な集合

記号 説明 LaTeXコマンド
 \emptyset 空集合 \emptyset*3
 [n] 集合 \{1, \dots, n\}
 \mathbb{N} 自然数全体の集合*4 \mathbb{N}
 \mathbb{Z} 整数全体の集合 \mathbb{Z}
 \mathbb{Q} 有理数全体の集合 \mathbb{Q}
 \mathbb{R} 実数全体の集合 \mathbb{R}
 \mathbb{R}_{\ge x} 集合 \{ y \in \mathbb{R} \mid y \ge x \}*5
 \mathbb{C} 複素数全体の集合 \mathbb{C}
 \mathbb{H} Hamiltonの四元数全体の集合 \mathbb{H}



行列

この章では,特に断りがない場合は Aを行列とします.

行列 to スカラー

記号 説明
 \operatorname{det}(A)  A行列式
 \operatorname{rank}(A)  Aの階数

行列 to 行列

記号 説明 LaTeXコマンド
 A^{-1}  A逆行列
 A^{+}  AのMoore-Penrose型一般化逆行列*6
 A^{\top}  Aの転置 A^{\top}
 A^{*}  Aの随伴*7
 A \otimes B  A BのKronecker積



代数

この章では,特に断りがない場合は Sを集合, Gを群, Rを環, Kを体とし,それらの元はその小文字で表すことにします.

記号 説明 LaTeXコマンド
 \mid G \mid Gの位数
 \operatorname{ord}(g)  gの位数*8
 \langle S \rangle 集合 Sによって生成される群*9.特に S = \{g\}のときは \langle g \rangleと略記します. \langle S \rangle

環と体

記号 説明 LaTeXコマンド
 (x_{1}, \dots, x_{n})  x_{1}, \dots, x_{n}によって生成されるイデアル
 R^{\times}  Rの単元群*10 R^{\times}
 K[X]  K上の一変数多項式環
 K[X]_{\le t} 次数 t以下の K上の多項式からなる多項式環 K[X]_{\le t}
 \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}  nで割ったあまりによる集合



確率

この章では,特に断りがない場合は Xを確率変数とします.なお,パラメータのとりうる範囲については割愛します.

用語に関する記号

記号 説明
 P(X \le t)
\Pr[X \le t]
 X \le tとなる確率
 E[X]E(X)  Xの期待値
 V[X]V(X)
\operatorname{Var}(X)
 Xの分散
 \operatorname{Cov}(X_{1}, X_{2})  X_{1} X_{2}の共分散
 F_{X}(t)  Xの累積分布関数
 f_{X}(t)  X確率密度関数または確率質量関数
 \phi_{X}(t)  Xの特性関数

分布に関する記号

記号 説明
 \mathrm{Ex}(\alpha) 平均 \dfrac{1}{\alpha}の指数分布*11
 \mathrm{G}(\alpha, \nu) 平均 \dfrac{\nu}{\alpha},分散 \dfrac{\nu}{\alpha^{2}}のガンマ分布*12
 \mathrm{N}(\mu,\sigma^{2}) 平均 \mu,分散 \sigma^{2}正規分布*13



暗号

この章では,特に断りがない場合は xをビット列, mを平文, cを暗号文とします.

記号 説明 LaTeXコマンド
 x_{1} \oplus x_{2}  x_{1} x_{2}排他的論理和 (XOR) \oplus
 \mathsf{pk} 公開鍵暗号における公開鍵*14 \mathsf{pk}
 \mathsf{sk} 公開鍵暗号における秘密鍵*15 \mathsf{sk}
 \operatorname{Enc}(m) 暗号化関数*16
 \operatorname{Dec}(c) 復号関数*17

*1:階数を返す関数rankのような,特別に名前を付けて定義した関数の記号はLaTeX演算子 (operator) として記述しています.そのため,そのような関数の記号は全て \operatorname{rank}のように立体で表記されています.

*2:基本的には\le<の使い分けと同様の気持ちでいます.しかしながら,真部分集合に\subsetの記号を使うと,\subseteqを単なる部分集合の意味で使う流儀の人には混乱を生じさせる虞があります.そこで強調の意味も込めて真部分集合については \subsetneqの記号を使うことにしています.

*3:よく\phiを使う人がいますがそれはさすがに駄目です.

*4:0を含むものとします.0の包含を明記したい場合は \mathbb{N} \cup \{0\} \mathbb{N} \setminus \{0\}\mathbb{N}_{>0}などと書くことにします.

*5:同様に \mathbb{R}_{>x}, \mathbb{R}_{\le x}, \mathbb{R}_{< x}も定義します.

*6:せっかく註を見てもらったのに申し訳ありませんが,自分で調べてください.

*7:随伴とは共役転置のこと.

*8:その数乗すると単位元に戻るような数のうち最小の正整数のこと.ただし,そのような数が存在しない場合,これは \inftyとして定義されます.

*9: Sを含む群であって最も包含関係について小さい群のこと.

*10: Rの元のうち,逆元をもつ要素全体からなる集合.乗法群ともいう.

*11:pdfは f(x) = \alpha \mathrm{e}^{-\alpha x}

*12:pdfは f(x) = \dfrac{1}{\Gamma(\nu)} \alpha^{\nu} x^{\nu - 1}\mathrm{e}^{-\alpha x}

*13:pdfは f(x)=\dfrac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^{2}}} \exp \left( - \dfrac{(x-\mu)^{2}}{2\sigma^{2}} \right)

*14:英語: public keyの頭文字をとっています.

*15:英語: secret keyの頭文字をとっています.

*16:英語: encryption functionの頭文字をとっています.

*17:英語: decryption functionの頭文字をとっています.